とうとう更地になって
解体作業があちこちで見かけるようになってきた。
9月以降は一気に進んだように思う。
10月、秋の気配の中で寺家地区も重機と産廃トラックが行き交う。
景色もずいぶんと変わった。
そんな中、「もったいない」精神で電話連絡があちらこちらからある。冷蔵庫、洗濯機、テレビ、ソファー、戸棚など「要らん?」
主には親戚筋から。年寄りで車がない人。その願いも真剣そのもの。
仮設に入る老夫婦二人には運び込めないものばかり。
大げさに言えば、珠洲中の人の心からの叫びに思う。解体の知らせが来るとなおさら現実味が増してくる。
欲しいのはやまやま・・・だけど置き場所がない。
行動力のある人は(?)コンテナを買って据え付け、収納場所にする。せめて自宅の大事なものを入れるために。
それさえもままならない高齢者ばかりの現実は厳しい。心が痛い。
自分のうちは、柱が折れ、周りに戸がない、窓もない、がらんどうな納屋。
しかし、解体を避けてなんとか残せないか?主人は残す決断をした。
焦らず、怒らず、穏やかな気持ちをもって。1年あまりかけて修繕することになった。
電気屋さん、水道屋さんなどは都合を聞いて珠洲に出かけて直してもらう。
主人の友人の協力もあり、二人、金沢から珠洲へ。何度となく往復。修繕のために。
窓、戸、ドア、建材などは頂いた物と調達したもの。親戚の家が解体される前に、その中に最小限運べるものをもらった。
冷蔵庫、洗濯機。客用座布団5枚と火鉢、家宝の掛け軸など。(そう言われてもたされたもの)
外回りの修繕は近所の業者さんに無理を言って請けてもらった。
漸く、雨、風、雪が凌げる納屋ができた12月時には感慨も一入だった。
電気、水道だけはある。これから一から積み上げていく覚悟ができた。